文章:Y
他人の世界を覗くのは容易いことではない。
相手の理解に苦しんで途方にくれることもある。
誰かの世界へ、森へとびこむように入って冒険ができたら。森では見たことのない輝かしい小川、
草にうまった宝石のような朝露を追いかけて、どんどん好奇心を満たして行けるだろう。
けれど気がつくとあたりは陰気さに包まれていて、となりを流れる川は血で、足元の鈍い光は罠かも
しれない―他人の森は想像以上に深い。もしかしたら永久にさまよってしまうのではないか。
村崎百郎館は彼の人生の展示室だ。そこでは本人の経験そして感情までもが陳列されている気がする。
そこで視線をうばわれる「物」に出会う。
見つめていると、だんだん錯覚に陥りはじめる。
―― 自分も展示の一部なのだろうか。
ここはいつか村崎百郎という電波に、飲み込まれてしまうかもしれない。